PASS THE BATON MARKET
「日本の倉庫を空っぽにしよう!」を合言葉に、
「日本の倉庫を空っぽにしよう!」を合言葉に、
PASS THE BATON MARKETから繋ぐバトン
スマイルズが運営するセレクトリサイクルショップ『PASS THE BATON(パスザバトン)』による新しい取り組みとしてスタートしたイベント、『PASS THE BATON MARKET』。企業やブランド、産地が抱えている“もったいない”や“困りごと”に向き合い、世の中に紹介していく場として2019年にはじまりました。
大量にモノを作って消費していた時代から、世の中は目まぐるしく移り変わりました。マーケットでは日の目を浴びることがなかったアイテムや、本来届けられる相手がいるはずだったモノにPASS THE BATONの見立てで光を当てなおします。そして、作り手と使い手にとっての“喜び”や“大事”へと、モノと想いを繋いでいきます。
第4 回となる今回は「日本の倉庫を空っぽにしよう!」を合言葉に、訳あって倉庫に眠っていたモノに光をあて、様々な企業やブランド、産地から会場に集います。
会場は2021年2月にリニューアルオープンしたコクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」。コンセプトに「街に開かれた、”みんなのワーク&ライフ開放区”」を掲げる場に、これまでにない蚤の市の空間が生まれました。
早速、2021年4月に開催された、第4回『PASS THE BATON MARKET』のイベントレポートをお届けします。
ファッションからインテリア、フード、フラワーまで
54のブランドが繋ぐバトン
54のブランドが繋ぐバトン
会場には、全国から業種・業態を越えて54のブランドが集まりました。 規格外品やデッドストックとして倉庫に眠っていたモノ、オンラインショップにて返品されてきたアイテム、コロナ禍でどうしても余ってしまった商品、訳ありだけど安全でおいしいフード……。さまざまな形で“もったいない”を楽しく解消していく『PASS THE BATON MARKET』の出展ブースをピックアップながら、出展の背景やモノにまつわるストーリーをご紹介します。
ショップバックは協賛企業様から倉庫に眠っていた在庫を提供していただき、ピンク色が目をひくマーケットロゴをスタンプ。
企業の倉庫に眠っていたファッションアイテムから生活雑貨、植物まで、あらゆるジャンルのお買い物が楽しめることはもちろんのこと、参加される方のご自宅に眠っている使用していないデニムアイテムや無印良品のユニットシェルフのパーツを会場で回収するプロジェクトも行います。
KOKUYO
キャンパスノートを作る過程で発生する余剰分のロール紙や、「オフィスに居心地の良い空間を、誰でもかんたんに」がコンセプトのDAYS OFFICE から厳選したアイテムが並びます。
青山フラワーマーケット
コロナ禍でウエディングをはじめとしたイベントの中止が相次ぎ、多くの花が行き場を失いました。本来ならば「ハレの日」に使われるはずだった花を束ねて、日常に馴染むブーケになって生まれ変わります。
BEAMS
BEAMSの店舗で使用されていたディスプレイ備品や家具が登場。イームズシェルチェアや柳宗理バタフライスツールもラインアップ。衣料品はもちろんのこと、会場でのディスプレイに使っているラックや大型什器も販売されています。ちょうどマーケットの企画を知ったタイミングで、倉庫にあった店舗備品の廃棄が迫っていたそう。
「こうしたマーケットには初出展とあって、3〜4つのレーベルからセレクトしています。今後は他のレーベルにも声をかけて取り扱いを増やしてもいいなと思います」と、話してくれた事業企画部の関さん。
「世の中にはモノが溢れています。BEAMSは作って売る側ですが、商品として十分な価値あるモノを倉庫にねむらせたままにせず『パスザバトン』の言葉どおり、必要としてくれる方にバトンを渡していくことも考えたい。アパレル・小売業にこうした取り組みが広がるといいですね」
倉庫のスペースには限りがあり、また廃棄するにも費用がかかります。あらゆる小売業の悩みのタネに光をあて、バトンを受け取る“使い手”にも嬉しいかたちで、モノの流れが変わってゆく様子を伺うことができました。
RePLAYCE
JOURNAL STANDARD やIENA などを運営する、ベイクルーズのリユースインテリアショップ『RePLAYCE』。ショップで使用したアンティークインテリアや制作什器など、60を超えるブランドからセレクト。老朽化した家具や使い道のない端材に、ひと手間を加えた家具やプロップスも登場しました。
URBAN RESEARCH
「伝統は革新の連続」という考えのもと、さまざまなコンセプトをもつブランドを全国に展開。今回はアーバンリサーチ社の廃棄衣料をアップサイクルしたサステイナブルマテリアル・プロダクトブランド「commpost」や様々な理由で役目を終え倉庫に眠っているハンガーやリメイク商品などを販売します。会場内では「commpost」の生地を使用したオリジナルサコッシュ作りのワークショップも開催!
VISION GLASS JP
理化学用ガラス製品や家庭用耐熱ガラス食器などを製造するインドのBOROSIL(ボロシル) 社製のシンプルな耐熱グラスや実験器具を取り扱う国府田商店株式会社/ VISION GLASS JP。ブースには生産国であるインドと日本の価値観の違いから、使用上は問題がないのに、見た目だけの理由で売り場に並べられなかった製品や、印刷不良のビーカー、保存瓶などが並びます。
ブースに立つ広報・板垣さんに聞くと、「インドの方がよく口にするのが「NO PROBLEM=問題ない」という言葉。輸入を続けるうちに、実は日本の厳しい基準に合わせるためボロシル社はかなり無理をしていることが分かりました。この製品を販売し続けるには私達が歩み寄るべきと考え、日本で背景を伝え、負荷をなくしてフェアな関係を続けるために、『NO PROBLEM(ノープロブレム)』を立ち上げました」
輸入をきっかけに、ぶつかったこの問題に共感する有志で集まってスタートした『NO PROBLEM PROJECT』では、取材の成果をまとめたタブロイド紙の発刊や、さまざまな事例の展示を通じて、日本の厳しさが生む価値の裏側にあるものや、物の価値を考え直してみる活動を2015年から続けられています。
「NO PROBLEM品は見た目にはいろいろあるけれど使う上では問題がないものですので、あえて値段を下げずに販売します。お客様には理由をお伝えし、ご納得いただけた際にご購入いただくことで、製造背景についてお話しする機会を作れることが発見でした。いずれはすべてがNO PROBLEMになれることが目標です。」
西海陶器 Common
Commonは波佐見焼の老舗・西海陶器が手掛けるテーブルウェアブランドです。世の中が混沌としている中でも、食卓が華やかに、活力が湧き出るようなテーブルウェアがずらり。以前、表参道のパスザバトンでの出展をきっかけに、今回のマーケットへのご縁に繋がりました。色ムラや黒点によって正規品として流通させることができないアイテムが並びました。
スーパーバイザーの今村さんによると「陶器は自然から採れる原料でつくり、焼き上げる窯の環境は気候などの自然に左右されるもの。釉薬は職人がひとつひとつ手作業で塗っています。どうしても色が濃く出てしまうロットや、ほくろのような鉄粉が出てしまうことも。ほとんど分からないものばかりですが、既存の商流では扱いができず、倉庫に眠っていました」
「西海陶器では、なるべくポジティブにモノを循環させていきたいと考えB品を“FACTORY SECOND”と呼んで扱っています。実際に手にとって見ていただけるので、背景を説明しながらお届けすることができます。鉄粉や色の違いが陶器の個性として、愛着を持ってくださるお客様もいらっしゃいます。構造をすぐに変えるのは難しくとも、ていねいにお伝えして愛着を持って使っていただけたら嬉しいですね」
無印良品 / IDÉE
ブース手前に並ぶ、あざやかな藍色の衣料品が目を引きます。これらは『ReMUJI』シリーズの商品で、無印良品の衣料品を日本国内で染め直されています。すでに一部店舗で販売されていますが、今回は色が濃くでてしまったなど店舗規格にあわないアイテムが登場。
また、無印良品のユニットシェルフのパーツを会場にて回収するプロジェクト『Re:SUS』も開催。通常、有明店でのみ実施しているサービスです。
回収したシェルフ(写真上)とメンテナンスしたシェルフ(写真下)のトライアル販売を開催。無印良品のロングセラー商品である『スチール・ユニット・シェルフ』と『ステンレス・ユニット・シェルフ』のパーツを捨てたり、倉庫に眠らせたままにせず、再活用していくプロジェクトです。
流通推進部の高田さんにお話を伺いました。
「もともと無印良品は無駄を省き、長く使えることをコンセプトに生まれています。先輩方が立ち上げた『ReMUJI』を始め、早くからサスティナブルな社会に向けてのバトンを渡してくれています。『Re:SUS』やマーケット参加など、お客様に伝えていく場はますます大切になります」
ITONAMI
2020年10月にブランドリニューアルしたITONAMIは、意志から始まるものづくりの力を信じて、 人・モノ・人の間を育むデニムブランドです。さらに、会場では着なくなったデニムの回収を実施。回収したデニムからつくった糸で、新たなデニム生地になり、オリジナル製品やジーンズとして生まれ変わります。
デニムを回収してくださったITONAMI代表の山脇さんにお話を伺いました。
「今日持ってきたアイテムは旧EVERYDENIMロゴのデッドストックではありますが、製品として問題のないA品ばかりです。うちの製品は長いものだと2016年から型を変えずに取り扱うロングセラーがあります。年単位でみても型数はあまり増やさず、一度つくったものを長く扱えるよう展開しています」
「お客様の買いやすさを求めると、サイズ展開を増やして在庫を積んで、かつ多くの店舗に陳列することが今の売り方。もちろん作ったモノ全部が売れるとは限りません。ほとんどは売れ残りを加味して値段を設定しているのは不思議なことですよね」
「ITONAMIは季節に左右されず通年で着れるアイテムが多いのですが、もっと季節性のあるものを作ると在庫も溜まりやすくなります。それでも、“去年と違う服”を売っていくため、前年のアイテムを販売しないのはもったいない。服の買い方はもっと色々なかたちがあってもいいはず」
安心・安全、もっとおいしくなった
“訳あり”が集うフードマーケット
“訳あり”が集うフードマーケット
お買い物を楽しんだら、お腹を満たすフードをチェック!度重なる休業や、時間営業の短縮により在庫をかかえることになったメーカーや店舗は少なくありません。マーケット限定でパスタやカレー、スープの他に、お味噌などの調味料から、お茶やスイーツまで美味しいものたちが集いました。
フードトラックにはおいしくお腹を満たすことで食品ロス削減に貢献したり、熟成が進んでさらに美味しくなった調味料など、個性豊かなおいしいものが食欲をそそります。
MAGURO NO ITADAKI
世界の海から帰ってきたマグロ漁船から吊り上げられるマグロに尾っぽがついていないのは、鮮度を保つために船上で血抜き処理をする時に切られてしまうから。その尾の身は船員さんたちにとっては密かなごちそうともいわれていますが、行きばを失ってしまうこともしばしば。そんな尾の身をメインにしたカレー「MAGURO NO ITADAKI」 を召し上がれ。
スープストックトーキョー
マーケットを主催するスマイルズからは、グループ企業の『Soup Stock Tokyo』が出展。空港ラウンジ等で提供予定だった「オマール海老のビスク」をアランチーニ(ライスコロッケ)に仕立て、マーケット限定でご用意。
カリカリ食感の生地のなかに、とろりと溢れるチーズ。アツアツを頬張れば、香ばしいオマール海老の旨味が広がります。また、コロナ禍による路線自体の減便等で、機内食として搭載できなかった「機内食用スープ」もラインアップ!
ふくや/きみとめんたいこ
昭和23 年創業、博多発の「ふくや」は毎日の食卓にもっと明太子を取り入れていただきたい、そんな思いを携えて福岡から参加されています。わけあって流通にのせられなかった商品を限定販売するほか、キッチンカーではスマイルズとのコラボレーションによる新たなブランド「きみとめんたいこ」として、マーケット限定のめんたいこパスタがラインアップ。
館内ラジオや
トークセッション、ウェビナー
トークセッション、ウェビナー
「これからのものづくり」「生活と消費」「循環とサスティナブル」等を切り口に、PASS THE BATON MARKETの出展企業をはじめ先進的に実践されている方々をお招きし、学びを深めていくトークイベントも開催されました。
またマーケットの会場内では、出展者の方とのトークセッションを館内ラジオとして放送。出展ブランドのストーリーに耳を傾けつつお買い物をしたり、ごはんを食べたり、楽しみ方はさまざま。
出展者の皆さまからはこんな声もありました。
「パスザバトンマーケットvol.1にも出展させていただき、そのときに本当に倉庫が空っぽになりました。そうすると不思議と新しい風が吹いてきたんです。今回もお客様との対話を楽しみながら、他の出展者さんともつながり、新たなクリエイションにチャレンジ出来たらと思っています。もしうまくいかなくても、パスザバトンマーケットのような場があると思えば、思い切ったチャレンジができますしね。」(Ayamé 阿賀岡さん)
「ウェビナーにてITONAMIの山脇さんとご一緒させていただいたご縁で、実際にプロジェクトを一緒に取り組むことが決まりました。パスザバトンマーケットというイベントは、お客様との接点はもちろんのこと、こういった企業同士の横のつながりも含めた場としても意味のある機会だと感じます。」(良品計画 湯崎さん)
次回のパスザバトンマーケットは、2021年秋を予定しています。
さまざまな企業やブランド、モノやその背景にあるストーリーが交差する場所として、引き続き魅力的なマーケットにしていければと思います。