INTERVIEW

我戸幹男商店が磨きあげる、山中漆器の「価値」
|Vol.10 出展者インタビュー

2022年12月10日(土)~11日(日)の2日間、コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」で開催されるPASS THE BATON MARKET。 第10回となる今回は、全63ブランドのうち28ブランドが新たな顔ぶれとなります。今から400年前、安土桃山時代に始まったとされる山中漆器。 その価値を磨き上げ、国内外へ魅力を発信する我戸幹男商店の初出展が決まりました。 代表の我戸正幸さんにオンラインでお話を伺うと、その後には山中漆器と国内外のデザインアワードの表彰状が並んでいました。


 山中漆器の価値を誰よりも信じて


―― 我戸幹男商店さんは、山中漆器においてどのような役割を担っているのでしょうか?

明治41年に轆轤(ろくろ)の町、山中温泉にて我戸木工所として創業し、漆器のベースとなる『木地』を作る木地屋でした。 父の代で商店機能が付いて、我戸幹男商店として商品開発が始まりました。山中漆器の産地は9つの垂直分業体制をとっていて、我戸幹男商店はその中で経営機能を担当しています。 各種工程の品質管理や納期などを含めたビジネスプロセス全体を管理するという役割です。

―― 分業にすることで職人さんがそれぞれの工程に集中できるということですね。 正幸さんは東京の問屋さんで修行をしていたと伺いました。

はい。僕が東京の漆器問屋で修行をしていた時、山中漆器は価格で勝負しがちで、ブランドを作る事が苦手で、流行に振り回されて商品開発をしている印象がありました。

―― これだけの実用性や美しさがありながら、その現実はとても悔しいものですね。

28歳で山中温泉に戻り、それから10年で500点ほどの商品を開発してきました。 同世代のデザイナーとの出会いを得て、とにかくさまざまなプロダクトを生み出していったんです。



そのおかげで、一般のお客様のファンも増えていき、5年前にはGATOMIKIO/1という直営店も作りました。 山中漆器は木地の完成度が高く、木の味わいや木目の美しさが特徴ですが、市場では均等で個体差のない商品が好まれます。 当たり前の事ですが、木には枝があります、枝の根元には節があります。ですが、それらは市場では不良品として扱われています。


 時代の「価値観」に、目を向ける


―― 木に節(ふし)があること、当たり前のようで、買い物の際にそこまで意識できない機会も増えているかもしれませんね。 今回のご出展では、どのような商品をご用意いただているんでしょうか。

弊社も厳しい品質基準を持っていますが、天然素材ゆえの特徴が原因で基準を満たさない製品が存在します。今回ご用意するのは『GATOMIKIO/charkmark』。最終の品質検査の際に基準を満たさない箇所に、実際に白いチョークでしるしを記している商品たちです。


これはコロナ禍の間に考えついたアイディアで、新たな「商品カテゴリ」として立ち上げました。 正規品のクオリティを担保すると、どうしてもそういった商品が生まれます。 とはいえ、どの商品も同じように手をかけてきているのに、これまではお届けする販路がなくて、なかなか歯がゆい思いをしてきました。 個体差があり、卸やオンラインでは販売できないのでお客様に1点1点どのような原因があって正規品になれなかったかも含めて、商品の魅力をお伝えしたいと思っています。

―― 『GATOMIKIO/charkmark』はこれまでも販売されているんですか?

山中温泉や関西のイベントでは物凄い反響を頂いております。 東京で披露するのは、PASS THE BATON MARKETが初めてのことです。皆さんの反応が今から楽しみです。



我戸幹男商店 代表取締役
我戸 正幸
1975年石川県山中温泉生まれ。我戸幹男商店に入社後、デザイナーを起用し、500点超の商品を開発。
2010年グッドデザイン賞中小企業長官賞、2022年A’DESIGN AWARD BRONZE[伊]など国内外のデザイン賞を受賞。




PASS THE BATON MARKET Vol.10 開催概要

日時:2022年12月10日(土)〜11日(日) 11:00〜19:00(最終日は18時終了)
※最終入場は終了時間30分前まで/雨天決行
住所:東京都港区港南1-8-35
入場料:300円 ※小学生以下無料
URL: https://www.pass-the-baton.com/news/16005/
主催:PASS THE BATON
共催:コクヨ株式会社
運営:株式会社スマイルズ
協賛:福島県商工会連合会
※社会情勢を鑑み、上記の情報は変更の可能性がございます。

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