CREATOR INTERVIEW

村上周×河村慶太(YEAH RIGHT!!)



PASS THE BATONが丸の内に1号店を構えてからまもなく10年。アーティストであり、amabroの主宰者でもある村上周氏とYEAH RIGHT!!のアイテムは、オープン当初からご紹介してきました。今回はそんなおふたりの初コラボレーションが実現。洋服づくりの“プロセス”を最大限に楽しみ、それを作品の魅力に昇華させていった物づくりに迫ります。


 PASS THE BATONをブランド創立時から支えてきた2組による
 はじめてのコラボレーション



――今回の企画は、河村さんに「PASS THE BATONの10周年企画で、どなたかとコラボレーションしてみませんか?」とご相談させていただいたのがきっかけでした。河村さんはなぜ村上さんとご一緒してみたいと思ったのですか?


河村慶太(以下「河村」):PASS THE BATONに所縁のある方とご一緒したいと思ったのですが、僕がもともと知っている方とコラボレーションしてもあまりおもしろくないな、と。それはお客さんもそうですし、自分にとっても。周さんは、ご自身のアートワークとは別に「amabro」をやられていますが、僕もYEAH RIGHT!!とは別に陶器のブランド「TALKY」をやっていて、どこか共通する部分を感じていたというのが大きいですね。


村上周(以下「村上」):陶器を作っていただいている窯元が同じだったりして、お互いの作品を見ていたし、共通の友人も多かったんです。



――村上さんは、河村さんからお声がけをいただいた時、どんなふうに思われましたか。


村上:アートを落とし込む先が今回は洋服ということで、それについては河村さんがプロなので、僕は裏方に徹しようと思いました。


河村:ぜんぜん裏方じゃないけどね(笑)。


村上:いや、でも、そのくらい未知の世界だったということです(笑)。しかも、レディースの洋服はほとんど扱ったことがなかったので、それもチャレンジでしたね。


――逆に、これまでレディースを主に作られてきたYEAH RIGHT!!にとっては、今回メンズのアイテムを作られたというのがチャレンジでしたよね。


河村:そうですね。基本的にはレディース/メンズに関わらず、お客さんが自由に着ていただけたらと思うんですが、作る方としては、今回はメンズとレディースをはっきり分けて考えていました。メンズのアイテムは男性が着たいと思えるベーシックを作ることを意識したんですが、初めて“自分でも着たい”と思いましたね。






 洋服を介したジャムセッション。
 重なり合って、ひとつの答えを出していくーー



――今回のコラボレーションがおもしろいのは、ジャムセッションのような手法で互いのクリエーションをぶつけ合っているところです。村上さんのシルクスクリ―ンプリントTシャツをYEAH RIGHT!!が加工することもあれば、逆に、YEAH RIGHT!!が加工したベースに村上さんがシルクスクリ―ンプリントを施すこともある。その掛け合いは、実際どんなところがおもしろかったですか。


河村:周さんが少し前にPASS THE BATONでやられていた展示のイメージがあったので、シルクスクリーンでプリントするのは割とストレートな文字やメッセージになるのかな? と思っていたんです。そうしたら、まったく真逆のものが来た(笑)。アブストラクトでコラージュ感の強いものだったので、最初はびっくりしました。でも、結果的にその方が作りやすかったですね。言い方が難しいですが、洋服がノイズだらけになり無効化されたような状況になるので、あとは付け加えるスカートや色のトーンで洋服を整えていけばよかったんです。

村上:確かに、前回展示させていただいた作品とはまったく真逆ですね。でも、今回それをやってしまうと、洋服とのバランスが取りにくくなると思ったんです。抽象的なプリントの方が裁断したときに予期せぬ見え方をするし、洋服とそれらが重なり合ってひとつの答えを作り出していくんじゃないか。そんなふうに考えていました。

河村:シルクスクリーンってすごく手間も時間もかかるんですけど、周さんはそうやって作ったものを「どこで切ってもいいよ!」って言うからすごいんですよ。「えっ!いいんだ!」って(笑)。

村上:「ポケットの裏になってもいいよー」とか言っていましたね。そこはもう全部河村さんにお任せで。その方が絶対にいいし、正解やルールはない。ルールがないのであれば、とことんルールがない方がいいと思っていました。それに、今回のアイテムって、ずっと“プロセス”なんですよね。モノづくりの“過程”をずっと見せているようなもの。最近はプロセスを重要視しないものが多いから、それもおもしろさのひとつだと思います。









 単なる“箱”ではなく
 化学反応を起こす場所として



――PASS THE BATONが1号店をオープンした10年前から、古着やリメイク、セカンドハンドに対する意識は大きく変わったのでは? と思っています。PASS THE BATONにオープン当初から深く関わっていただいているおふたりは、どんなふうに感じられていますか。


河村:僕はリメイクを活動のテーマに13、4年やってきましたが、リメイクにも注目される波みたいなものがあると思っています。それがここ数年また高まっている印象があります。しかも、今までの波とは違って、以前は1点モノのおもしろさとかファッションとしてのかわいさが注目されていたのが、最近は、社会的な意義を含めてリメイクの価値がちゃんと認められているんじゃないかと。ファストファッションが盛り上がったことによる揺れ戻し的な部分もありますが、これが波じゃなくてずっと定着していくといいなと思っています。


村上:マーケットが極端に変わってきていますし、モノが溢れかえっていますよね。供給過多になっているからこそ、量産品より1点モノが気になっているのかもしれない。僕はペインターとしてアート表現をしていますが、みんながどんなものを求めているのか、というのは常に気になります。


――――この10年で、いち個人が作品や思いを伝えるための方法は急増しました。そんな中で、おふたりが活動のステージとしてPASS THE BATONを選んでいただいている理由は、どんなところにあるのでしょうか。


村上:単に自分の作品を発表する“箱”ではない、というところですかね。お店とコラボレーションすることで新しい価値が生まれて、化学反応が起こっている感覚がいつもあります。


河村:僕らはブランドのコンセプトが“リメイク”なので、それとここまでマッチするお店は他にないと思いますね。YEAH RIGHT!!をはじめて3、4年経ったぐらいからのお付き合いですが、出会えてよかったと本当に思っています。


――――では最後に。まもなくギャラリーがスタートしますが、おふたりが楽しみにしていることを教えてください。


村上:なるべくものを買わない、持たないという風潮もありますけど、今の若い人たちがそこでしか手に入らない特別な“1点モノ”をどんなふうに見てくれるのか、それが楽しみですね。自分の目で見てみたいと思います。


河村:古着がそもそも“1点モノ”なのに、そこにさらに周さんが1点1点異なるプリントをする。そこに生まれている自分でもよく解らない相乗効果を、お客さんがどう感じてくれるのか楽しみですよね。洋服を見て“いいな”と思ったときの惹かれ方って、1点モノの場合の方が強いような気がしているんですね。人それぞれ惹かれるポイントは違いますが、そういう一着にここで出会ってもらえたら嬉しいなと思っています。





村上 周 -AMANE MURAKAMI-
1975年生まれ。神戸芸術工科大学在学時にシルクスクリーンと出会い、イラストレーション、グラフィックデザインを学ぶ。同大卒業後、創作活動を始め、またデザイン事務所「AMDR」を立ち上げ、アートディレクターとして活動。後に村上美術株式会社を設立し、同社オリジナルブランド「amabro」の監修を手がける。また、ライフスタイルセレクトショップ「BRICK & MORTAR」とベビーギフトセレクトショップ「GIVING STORE」を運営。なお、2018年9月に「BRICK & MORTAR」2号店を日本橋髙島屋S.C.にオープン。
http://www.murakamiart.jp
Instagram @amane_murakami


河村 慶太 -KEITA KAWAMURA-
1980年生まれ。文化服装学院卒業後、NOZOMI ISHIGUROアシスタントとして勤める。 2005年井村美智子とともにYEAH RIGHT!!設立。袖を交換/共有できる”COMMON SLEEVE” 、東京コレクションオフィシャルスケジュールでのランウェイショーや、コットン(和綿)を自分たちで栽培、収穫しTシャツを作る”KNOW COTTON PROJECT”、フォトグラファー東海林広太との写真展やビジュアルブックの刊行など多くのプロジェクトを企画。陶器ブランド「TALKY(トーキー)」、日用品×デジタルコンテンツを制作する「PEOPLEAP(ピープリープ)」のメンバーとしても活動。その他、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科衣服論特別講師、BSフジのTV番組「ANSWERS」出演や、代官山の変則直営ショップ「SAMVA」共同運営など、活動は多岐に渡る。
http://www.yeahright.jp/
instagram @yeah_rightii



PASS THE BATON 10th ANNIVERSARY
AMANE MURAKAMI×YEAH RIGHT!!
『AROUND THE RIGHT!!』


会期:2019年6月20日(木)~7月7日(日)
会場:PASS THE BATON OMOTESANDO GALLERY
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ西館B2F
Monday-Saturday 11:00 ~ 21:00
Sunday・Holiday 11:00 ~ 20:00
※表参道ヒルズ休館日を除く

会期:2019年7月20日(土)~8月4日(日)
会場:PASS THE BATON KYOTO GION
〒605-0085 京都市東山区末吉町77-6
Monday-Saturday 11:00 ~ 20:00
Sunday・Holiday 11:00 ~ 19:00
※不定休


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