INTERVIEW

ノカテが提案する、「日本水仙」の新しい楽しみ方
|Vol.10 出展者インタビュー


2022年12月10日(土)~11日(日)の2日間、コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」で開催されるPASS THE BATON MARKET。 第10回となる今回は、全63ブランドのうち28ブランドが新たな顔ぶれとなります。今回は、会場中庭で、香り高い日本水仙が並びます。 日本海を望む越前海岸で育った日本水仙の花束を、品川の会場に届けてくれるのは、初出展のノカテです。代表の高橋さんにお話を伺いました。

 フィールドワークで出会った、水仙のある風景


―― ノカテは、どんなきっかけで生まれたプロジェクトなのでしょうか?

とあるフィールドワークで訪れた居倉(いくら)町という海沿いの小さな集落で、藤崎さんという水仙農家さんと出会ったことが現在の活動の原点です。 居倉町を含む周辺一帯のエリアは国の重要文化的景観としても選定を受けていて、四季折々の生業をつなぐことで続いてきたこの土地の人々の暮らしには自分たちの生活にはない豊かさがありました。 現地に訪れたタイミングはちょうど水仙が咲いている時期で、藤崎さんのこれまでの人生についてお話を聞きながら、水仙づくりの話にもなりました。


―― 実際に足を使って、地域に根差した文化や生業を見に行ったんですね。

畑のそばをみんなで歩いていると、風にのって水仙の香りがしてくるんです。 斜面に広がる水仙畑の景色にはとても感動しました。 一方で、生業としての水仙栽培には多くの課題があることもそのとき藤崎さんから教えてもらいました。


越前海岸に咲く日本水仙は『越前水仙』というブランドで知られる高級花。 昔は栽培が盛んだったものの、現在では農家さんの高齢化や獣害の影響で担い手も少なくなっていると。 また、「越前水仙」がブランドとして知られる花だからこそ、出荷するための規格も大変厳しい規格があることも知りました。

―― 『越前水仙』としての評価が高ければ高いほど、規格も厳しいということですね。

「越前水仙」として出荷するための規格表は何段階にもわたっていて、長さ、葉の色、つぼみの状態がどうかを見て、細かく選別する必要があります。 収穫だけでなく選別にも大変な手間がかかるんですね。 冬場の仕事である水仙栽培だけで食べていくのも難しく、若い世代が生活のための仕事とするにはなかなか高いハードルがあることがわかりました。



 時代の「価値観」に、目を向ける


―― 一生活者としては、美しい水仙を手にしたとしても、作り手さんのそういった苦労を想像しきれないなぁと思います。

何度も現地に足を運びながらお話を伺っていくと、この地域の方は、もともとパラレルワーカーだったということがわかってきました。 わかめ漁やサザエ漁、大工、水仙栽培など、いくつかの生業をつなぎあわせていくのが主流だったんです。 水仙栽培専業では食べていくのは難しいけれど、他の仕事と組み合わせる前提で発展していったという側面が見えてきました。 今の農家さんの子どもの世代になると、「いい会社に長く勤める」という働き方が主流になってきて、そうするとどうしても「水仙栽培を継ぐ」のも簡単な話ではないというのが理解できます。

ただ、チームで話し合っていくなかで私たちが気付いたのは、これまでの価値観にとらわれず多様な働き方をする人が現代にも増えているということでした。 そんなときにふと目に入ったのが、規格にあわないというだけで畑に取り残されていた美しい水仙たちでした。 畑で風に揺れているこの美しい水仙たちをこれまでにない形で世の中に届けることができれば、多様な働き方のひとつとして選んでもらえる新しい生業をつくることができるんじゃないかと考えたんです。

―― 「生業としての水仙栽培」に着目をして、そうしたスタイルで継承していくということ自体、画期的です。驚きました。

ノカテが考えた新たな生業の種が「SUISEN Bouquet」です。 正月の飾り花や華道の世界で使われることが多く、しっとりとした『和』のイメージが強い日本水仙ですが、海外ではもっと自由で軽やかに、結構カジュアルに楽しまれている花なんです。 『SUISEN Bouquet』が多くの人に求められ、冬場の生業として成り立つようになれば、多様な働き方が増えるこれからの時代に水仙栽培という営みが繋がっていく可能性があるのじゃないかと思っています。


現在ノカテでは、デザイナーや建築家など様々な職能をもったメンバーが、福井・滋賀・大阪・佐賀などに住みながら活動しています。 出荷期間は11月末頃から3月上旬頃までなので、今回のPASS THE BATON MARKETの時期にぴったり合いました。 普段はECを中心に販売を行っていて、昨年は福井県内、県外の花屋でも販売をしました。 今年は都市部でももっと手に取っていただけるようにしたいと、ちょうど考えていたのです。

ノカテでは“規格外の水仙”という言い方はあまりしません。 “従来の規格にこだわらなくていいんじゃないか?”“世の中に求められるものってなんだろう?”。 そんな問いを立て、デザインをして、届けていきたいと思っているんです。


日本水仙って、本当に香りが豊かで、特に露路ものは生花としての生命力を肌で感じます。 語りきれない水仙の魅力を、たくさんの人にお伝えしたいです。


合同会社ノカテ 代表社員
髙橋 要
山形県生まれ。2010年新潟への移住をきっかけに中山間地域での地域づくりに携わり始める。
2015年福井へ移住。2021年合同会社ノカテ設立。




PASS THE BATON MARKET Vol.10 開催概要

日時:2022年12月10日(土)〜11日(日) 11:00〜19:00(最終日は18時終了)
※最終入場は終了時間30分前まで/雨天決行
住所:東京都港区港南1-8-35
入場料:300円 ※小学生以下無料
URL: https://www.pass-the-baton.com/news/16005/
主催:PASS THE BATON
共催:コクヨ株式会社
運営:株式会社スマイルズ
協賛:福島県商工会連合会
※社会情勢を鑑み、上記の情報は変更の可能性がございます。

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