INTERVIEW

工房をたずねて:京都・伏見人形「丹嘉」
|Vol.11 出展者インタビュー


今回から始まった新企画「PASS THE BATONの蒐集」は、作り手のとんでもないコダワリや、届け手の斜め上からの見立て、そしてこれまでの人生で見知らなかった新たなモノとの出会いを目指し、さまざまな逸品を私たちの独断と偏愛で紹介する企画です。
vol.1は伏見人形を作り続ける唯一の窯元・「丹嘉」をフィーチャー。伏見街道沿いの工房へ赴き、8代目の大西貞行さんにお話を伺いました。

 伏見人形をつくり続ける、ただ一つの窯元「丹嘉」


―― そもそも「伏見人形」とは、どんなものなのでしょうか?

私たちが作る「伏見人形」の起源は、今から400年程前、桃山時代末~江戸時代初期頃と言われています。 郷土人形は、その土地土地のものなので、各地でそれぞれの成り立ちがありますが、伏見人形は、ここ伏見が伏見稲荷大社のお膝元であることから生まれました。
五穀豊穣・商売繁盛の神様として全国各地から参詣者が後をたたず、山自体が信仰の対象ですので、その山の土を使って作られた土人形で五穀豊穣を祈願したのが始まりといいます。 全国で90種類以上ある土人形のなかで、伏見人形の系統をひかないものはないと言われる、土人形の元祖です。

―― 丹嘉さんは、現在「伏見人形」で現存する唯一の窯元と伺いました。

我々の窯が始まったのは寛延年間で270年ぐらい前ですから、おそらく伏見人形作りが隆盛していた頃にできたと思われます。 うちの先祖は丹波から出てきていたので、もともとは「丹波屋」と名乗っていて、4代目の嘉助さんの頃、「丹波屋嘉助」で「丹嘉」となりました。 江戸後期の最盛期には50軒ぐらい窯元があったそうですが、私が認識した頃、50年前には既に2軒ぐらいになっていて、今はうちだけになっています。

 時代を越えた約2000種の土型、ユーモラスな面構え

―― どのような手順で、丹嘉の人形はできるんですか?

伏見人形は型を使って作りますが、土型と石膏型のどちらかを使います。土型は摩耗しづらいので江戸時代から使い続けていて、前後または上下の2面を取り出して乾かないうちにそれらを引っ付けます。

石膏型の場合は、粘土を詰めてパカッとあけたら型ができます。数日間天日干しして素焼きの状態で彩色。 釉薬をかけていないので色落ちします。春と夏で生地を作って、9月から3月で彩色です。夏場は土が扱いやすく、絵の具が腐りやすい。 冬場は土が凍るし、絵の具の調子がいい。昔から非常に合理的に夏場と冬場で成型と彩色の時期が分かれています。

―― 採色中の人形たちも、たくさん並んでいますね。

採色は塗り絵のように、線のある所に色を入れていきます。長年やっていても表情を描く時は緊張しますし、正直取材の時にはやらないようにしています。 デフォルメというか、ちょっとユーモラスな顔たちは、これは本当にもう昔の人の造形力といいますか、デザイン性なんですよね。 それが土型や記録などを通じて「残っている」のは本当にありがたい話です。何百年前の人も、この顔を描いていたんだなとしみじみ思うんです。

 あってもなくてもいいのなら、豊かなものを作りたい

―― 人形のモチーフはどのようなものなんでしょうか。

伏見人形のモチーフは稲荷大社のキツネをはじめ、干支、招き猫やお多福などの縁起もの、歌舞伎などの当時の流行りものなど様々です。 昔からその時の流行事、最新のニュースなどを取り入れたモチーフで作られてきたので、「今、昔の人の気持ちになって作るとしたら何だろう?」って思った時に、 京都に水族館ができたから「これにしよう!」と思って、シンプルに可愛いからという理由でペンギンを作ってみたりしています。

―― まさかの、ペンギン!とにかく、シンプルに可愛いですね。

今でもご利益を感じて買ってくださる方もいますが、信仰的背景以外でも「これ飾っておきたいな」という、シンプルにいいなって思ってもらえることを目指しています。 あってもなくてもいいものだからこそ、逆にあってほしいというか、そこにあるだけで豊かっていうことが大事だと思うんです。 本展でこれだけの量の人形たちを世に出してくださる皆さんの熱量はありがたいし、東京で出すこと自体が稀少ですから、どんな反応があるんだろうって楽しみです。

当日、会場に並ぶ伏見人形たちは、都内イベントで過去最多となる約120種となりそうです。
一部は、事前にこちらのオンラインカタログよりご覧いただけます。
目と目があったら、それはきっと、運命の人(形)。


 PASS THE BATONの蒐集 Vol.1 丹嘉 オンラインカタログ


オンラインカタログはコチラ


PASS THE BATON MARKET Vol.11 開催概要

日時:2023年4月15日(土)〜16日(日) 11:00〜19:00(最終日は18時終了)
※最終入場は終了時間30分前まで/雨天決行
場所:コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」(屋内・屋外)
住所:東京都港区港南1-8-35
入場料:300円 ※小学生以下無料
URL: https://www.pass-the-baton.com/news/16492/
主催:PASS THE BATON
共催:コクヨ株式会社
運営:株式会社スマイルズ
※社会情勢を鑑み、上記の情報は変更の可能性がございます。

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